霊安室の歌

 コツ、コツ…
 乾いた靴音が、廊下に響く。
 闇はまるで触手のようにゆらゆらと忍び寄り、ともすればライトの光すらも浸食しそうだった。
 …恐怖心が、余計に暗く感じさせているのだろうか?

 コツ、コツ、コツ・・・・・・
 更に歩みを進めていくと、微かな歌声が聞こえてきた。
 まただ。
 一体どこから聞こえてくると言うのだろう?この時間になるといつも聞こえてくる、歌。
 誰が何の為に歌っているのかも、さっぱり判らない。
 出所を突き止めようにも、近いような、遠いような、どうにも頼りがなく、未だに誰の仕業か判っていない。
 フウ。
 ため息を付く。…悪戯だろうと思っては見るものの・・・やはり気味が悪い。
 せめて早く見回りを終えて戻ろう。
 理不尽なコールに振り回されるとしても、こんな見回りよりその方がどれほど良いか。
 そう思って、足を早めた時だ。
 ふ、と、冷たい風が一陣、頬を掠めた。
 ゾクリ、と背筋を這う感触。
 それはその冷たさのせいだけではなくて…

 風を感じた方へと、視線を向ける。
 そこは、霊安室だった。
 どうしよう?
 流石に躊躇う。が、あの歌が、風に乗って微かに強く耳に届きはしなかったか?
 その疑問が拭えない。

 …ややあって。
 決心して、扉を…開けた。
 ヒヤリとした空気が、流れ出す。
 そして、見たものは……
 宙に浮かぶ、半透明の、「聖歌隊」としか思えない…半透明の彼等。

 〜〜〜♪
 日本語か外国語かも判らない、不思議でだが綺麗な事は解る歌を無邪気に歌っていた彼らは…
 目が合ったと思った瞬間、フッと宙に溶けるように、消えた。


 その後…まるでそんな事は始めから無かったように、その歌も聞こえては来ない。
 あれは一体、何だったのだろう?

<End>



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こちらは、誰かがお題を出して、それをその場で即興で作るという遊びで書いたものになります。