長い長い夜の事

静かな静かな夜の事。
いつからか 何処からか 忘れたが。
ずっと、ずっと、歩いてた、時の事。

いずこか知れぬ森の中。
静かな静かな森の中。
ひたすらひたすら歩いてた。
気付けば空がポッカリと。
ポッカリと、切り取られてた。
果てなく高い紺の中。
星々煌々、煌々と、輝いてた。

余りにそれが綺麗だったから。
私は思わず手を伸ばした。
我知らず、手を伸ばした。
掴めると思った訳じゃない。
ただ余りに綺麗で、手を伸ばした。

やがて空から小さな光が降って来た。
光は手の中にすっぽり収まって。
微かに暖かく輝いていた。

それが何かは解らなかったが。
私はそれを、星だと決めた。
そう思いたいから、そう決めた。
小さく輝く欠片をそっと、
手の中隠して、歩き続けた。
欠片は不思議な温かさ。
ひんやり冷たく心地良く。
ほんのり温かく心地良い。
そうしてまた、歩き続けた。

長い長い、夜の事。
長い長い、旅の事。
いつの事やら忘れたし、
どこの事やら忘れたが。
むかぁし、むかぁし、有った事。

それから欠片は、導となった。
地図のない旅で、欠片が地図となった。
そして少女は、やがて辿り着いた。

初めて見る場所、けれど、此処だと解った場所。

そして少女は。
あの日、欠片が降ってきた意味を知った。
この日の為だったのだと、理解した。
少女は微笑み、そして、それを使った。

短くて長い、夜の事。
少女は微笑んだまま、駆け抜けたのだった。

冷たく輝いていた、銀の光は、いつしか。
暖かな、赤い光に、輝いていた。
焔の色。優しい色。
私を温めてくれる、色。

ようやく手に入れた、居場所で。
少女はうっとりと眠りに付いた。
一面の赤に、包まれながら。