何故、を問いたなら

君は。
何故、と問う事を、知ってるだろう。
何故、という意味を、知ってるだろう。
だから、きっと。
君は、答えない。
振り返、らない。

軽く手を振っただけで、君は。
そのまま去って、行くのだろう。
欠片も、名残を残さずに。
欠片も、痕跡を残さずに。
欠片も…未練を残さずに。

別れを惜しむのは、いつも、残される側だ。

君は、きっと。
何処にでも、行けるのだろう。
僕を、置いて。
何処にでも行ける、その羽根で。
何処までも、行くのだろう。

君に、僕は必要ない。
最初から、必要ない。
そう、解っていた事。
それでも、夢を見た。

あゝ。
船が、出る。
君を、乗せて。
船が、出る。
出て、しまう。

行ってしまったら。
きっと、もう、二度と、会えないのだろう。
そして君は。
遠い遠い異国で、変わらず過ごすのだろう。

ほら。
出港を告げる音が、鳴っている。
別れを告げる音だ。

しがみついて、引き止めて。
何故、を説いたら、君は、答えただろうか。
話の続きを、してくれただろうか。

是も非もない、
ただ、何故、と、
ただ、それだけの事、を、
何故、と。

あゝ。
船が…出る。
遠く、西の、最果てへ。
まだ見ぬ、大地へ、と。

何故、君だったのだろう。
何故、僕だったのだろう。
何故、交わったのだろう。
何故、見つけたのだろう。
何故、出会ったのだろう。
何故、去ってくのだろう。
何故、留まらぬのだろう。
何故、見送ったのだろう。
何故、存在したのだろう。

何故、何故、何故…

何故、は、尽きない。
問いかけは、尽きない。
そして。
応えは…ない。

陽の、光が。
カーテンを、織りなして、緩く、緩く、包み込む。
世界を、優しく、包み込む。
そして、優しく、拒むのだ。
僕、を。

光は、まだ、見えない。