風に溶け込む光彩

 放課後の、教室。
 薄い闇が覆い始めたそこは、一種神秘的。
 いつもは楽しみな時間が…けれど今日は、この闇と一緒に私の心も沈んでいきそうだった。
「どうしたの?麗奈」
 柔らかなアルトの声が振ってくる。
 逆光で表情は見えないが、きっと全てを判っているような、楽しんでいるような、そんな笑みを浮かべているのだろう。
 理沙と恋人同士に近い関係になってからまだ一月あまり…それでも理沙の仕草などは多少判って来たつもりだ。
 そう…昼休みの出来事も、単なる勘違いか、それとも事故だろう、きっと。
 気にする必要はないはずだ。
「ううん…別に……」
 呟いて、私は理沙に近寄った。
 肩より少し上で揃えられた、短い髪にそっとキスをする。
 サラの優しい香りが鼻をくすぐる。理沙の香り……
「麗奈……」
 苦笑するかのような声で、理沙が囁く。
 その顔を覗きこむ、けれどその表情を判じる前に、視界は塞がれてしまった…理沙がキスしてきたからだ。
 浅く、長い口付け。
 ディープキスは滅多にしない、私がまだあまり免疫がないからだ。
 変わりに、想いを伝えるように長く口付ける。時が止まってしまったのかと錯覚するほどに。
「理沙……」
 理沙の表情は見えない。理沙の周りには光があふれているのに、まるで意地悪をするかのように理沙の顔だけが闇に覆われて。
「どこにも行かないよね…?」
 ワタシヲ 嫌イニナッタリ シナイヨネ……?
 離すまいとするように、強く理沙を抱きしめる。
 不安を払おうとするそばから、悪夢が忍び込む。
 昼休みに屋上で見た光景が……
 理沙。貴女は…あの時他の男とキスしてた?
 私以外の誰かを…好きになってしまったの……?
 無意識のうちに、涙が零れてきそうになる。
 馬鹿げた不安だと思っているのに…思いたいのに……

 ふ、と麗奈が微笑んだ気がした。
 闇に覆われるその中で、まるでそれが答えだというように……