それでも一緒にいたいから

もう一人のボク…君と、ずっと一緒にいたい。
  ――ああ、オレもだ。
だけど君は…君には、行くべき場所がある。
  ――…けどオレは。永遠にお前といたい。
もう一人のボク…
  ――記憶なんて戻らなくても…先へ進めなくても…相棒といられるなら…それでいいんだ…



…それは。何処まで本心なんだろう?
ボクを気遣って、言ってくれてるの?
それとも、本当に、本心から…?

…信じる事が。ボクの強さだと、君は言ってくれたのに。
ボクは…怖がってる……

今が続いて欲しい。何も変わらずに。
危険なゲームは、もうしないで欲しい。
ただ楽しく、笑って、君とずっとゲームをしてられたら、良いのに…

ねえ…もう一人のボク…
君は今…何を思っているの…?



…へへ。不安に思ってたら、君に嫌われちゃうかな…
  ――そんな事はないさ。
だってボクは…不安に思うって事は、君を信じれてないって事なんじゃないかって…
  ――…ヒトは、誰だって弱さを、迷いを、抱えてるものさ。
でも、君はボクを信じてくれている。ボクもそれに応えたいのに…
  ――相棒だって、信じてくれてるじゃないか。相棒はそれでいいんだ。それだけでオレは…



見えない触手が忍び寄ってくるかのように、緩やかに闇が…広がって、行く。
心の部屋の、冷たさが…増していく。
これはオレの闇の…写し絵だ…

相棒の不安が…扉の向こうから、闇を通じて、伝わってくる。
その重さに…その冷たさに…胸が…締め付けられる…
何故、とは、聞けない。
何が相棒を不安にさせているのか。
きっとその質問は…決定的な、ピースになる。
だから…

どうしたら、相棒の不安を取り除いてやれるだろう?
オレは、本心から。相棒とずっと一緒にいたいのに。
相棒がそれを望んでいるからだけじゃない。
オレが、相棒と一緒にいたいんだ。

未来に進めなくたって良い。
記憶なんて戻らなくても良い。
相棒と、皆と、一緒にいられれば、それだけで良いのに。

皆と一緒に楽しく遊んで、笑って、そして…
そしてそれは、相棒の望みとも、一緒で。
だから。
二人が二人とも望んでいるんだから、変わる事なんてないのに。
変わる必要も、変わりようも、ないのに。

なのに…



ねえ、もう一人のボク。君は普段、どうしてるの?
  ――ん…特にこれ、って無いな…ボーっとしてたり、ゲームをしてたり、寝てたり…
退屈とか、寂しいとか、思ったりはしないの?
  ――特に思わないな。それが普通だからってのもあるが、お前らの事も見てたりするしな。
ボクもパズルを組み立てる前はずっと一人だったけど…ボクだったら…きっと、辛いと思うかもな…
  ――相棒は人が好きだもんな。
うん。だから…君もずっとあそこにいるのは淋しいんじゃないかって思って…
  ――なんだ、そんな事か。オレは結構、満足してるぜ。いつでもお前達と一緒にいられるしな。
…そっか……
  ――安心しなよ、相棒。それにオレは、いつでも好きな時にお前をからかえるのも結構楽しいんだぜ?
…! もー、それはヤメてよ!
  ――ははは、それはお前次第だな。
もう…



彼の笑い声が響くが、解ってる。彼がきっと、ボクのために明るく笑ってくれてる事を。
もう一人のボクは、いつだってボクを気遣ってくれている。
いつも、ボクのために動いてくれている。
今までそれに沢山甘えて、助けられて、そして…

…ああ。やっぱり。
彼は本当に、強くて優しい。
ボクこそ本当の強さがあると言ってくれてるけど、それは彼の幻想だ。

一体。
目の前の幻想に、本当に縋っていたのは、どちらなんだろう?

何かが、砕ける音が…どこか遠くで、聞こえて。

…薄く。
…笑う。
たった一つの…偶像を、抱いて…



ねえ、長い時間どっちかの部屋で一緒に遊べたら、何して遊ぼうか?
  ――唐突だな…。んー…まあ、相棒となら、どんなゲームでも楽しいだろうしな…
そうだね、ボクもそう思うよ。
  ――どうしたんだ?急に。
うん、今度長い休みがあるからね。準備しとこうかな、と。
  ――そういう事か。楽しみにしてるぜ。
うん!張り切って準備するからね。
  ――言っとくけど、ゲームは負けないからな。
ボクだって負けないよ!
  ――フフ…
へへっ。 …ね、もう一人のボクも、ボクとずっと一緒にいたいって思ってくれてるんだよね?
  ――?ああ、勿論。
そうだったね。へへっ…
  ――…?



不思議そうな彼に。黙って笑みを浮かべる。
いいんだ。解らなくて。
これは…教えない。その時まで、ボクの秘密だ。

うん。うん。
ボクは彼といたい。彼もボクといたい。
なんてシンプルなんだろう。
だから。こうするのが一番なんだ。

もう一人のボクは…怒るかな?悲しむかな?
もしかしたら、もっと辛い想いをさせちゃうんだろうか。
でも…

もう一人のボクは。望めば、何処にでも行ける。
見果てぬ先を目指して、何処までも…突き進んで行ける、行けてしまう。
そしていつか、その時がやってくる。きっと。

そんなのは、どうしても…
だから。
どうか、許して欲しい…
君に甘えるのは、これで最後にするから…

ね、もう一人のボク…



ふふ、いっぱいゲーム持って来たぜー♪
  ――ホントにいっぱいだな…何日遊ぶ気だこれ…
へへ、ちょっと張り切りすぎちゃったかなー?
  ――ま、いいさ。いつでも遊べるんだから、遊びきれなくたって今度すれば良いんだし。
…うん、そうだねー。さっ、どれからやる?
  ――そうだなー…コレとか、やった事無い奴だな。
オッケー、じゃ、それからやろっか♪
  ――よし、行くぞ!



くそー、また負けたー
  ――くくっ、またオレの勝ちだな、相棒。
うー、なんでかなー、今度こそ行けるって思ったのに…
  ――いや、結構ヤバかったぜ。あそこで、こっちじゃなくてこっちを引かれてたら、オレが負けてたな。
タイミング、かあ…
  ――ああ、だからそう落ち込むなよ。少なくても相棒は、かなり手強いぜ。
そっかー…よーし、もう一度だ!
  ――よし、勝負だ!



はー、よく遊んだー。
  ――ああ、ホントだな。ん…いつの間にか随分時間経ったなあ。
そうだねー、ゲームに夢中で全然気付かなかったよ。
  ――ゲームしてると、ついつい時間を忘れるぜ…
今日はそろそろ寝ようかな?
  ――ああ、そうだな。ちゃんと寝ないと身体に悪いしな。またな、相棒。
……
  ――…?どうした?相棒。
…ねえ、君もここで、寝ない?
  ――…?
君の部屋、いつ行っても寒いし、なんか空気も重たいじゃない。あの部屋でゆっくり寝れるのかなーって。
  ――ん…特に気にした事無いぜ…。でも確かに、相棒の部屋はなんだか暖かいよな。
うん…だから、もし君が嫌じゃ無かったら、どうかな?勿論落ち着かなかったら、自分の部屋で寝れば良いさ。
  ――そうだな…よし、たまには一緒に寝るか!
うん!



もう一人のボクの笑顔に、嬉しく思いながら、チクリと僅かに胸が痛む。
でも悟らせないように、ボクも一緒に笑う。
今日が明日も、明日が明後日も、ずっとずっとずっと、続くように、願いながら。

せめてギリギリまで、悟らせたくない。
その笑顔が、変わって欲しくないから。



――相棒の笑顔が、いつもより少し陰っている事に気付きながら。
気付いた事に気付かれないように、オレは笑う。
相棒の様子が少し変だとは、ずっと思っていた。
けど、正体の見えない不安に侵されているのを感じていたから。
それをまだ引きずっているのだろう、と思って。
せめてそれが和らぐよう、相棒が望むなら、可能な限り一緒にいようと、そう、思って。

オレが気付いている事は、決して、悟らせまい。
その笑顔が、変わって欲しくないから。
それが、どんなに脆い笑顔であっても。



おはよー、もう一人のボク。
  ――おはよう、よく眠れたみたいだな。
うん、君もちゃんと寝れたの?
  ――ああ、相棒のおかげでな。
良かった。じゃあ、これからはずっと一緒に寝ない?
  ――そうだな…じゃあ、そうするか。
ふふっ、昼も夜も一緒だぜ!
  ――はは、そうだな。
よしっ、早速また遊ぼうかー。
  ――おう!



あー、惜しかったー!
  ――フフ、まだまだだな、相棒。
くっそー。
  ――フフ。ん…そういえば相棒、一度起きなくて良いのか?ご飯食べてないだろ?
大丈夫だよー。ここにいるとお腹も空かないしねー。もう一人のボクもそうでしょ?
  ――ん…まあな…
だからボクも大丈夫だぜー。ほら、もう一回行くよ!
  ――…ん、解った、来い!
行っくぞー!



はー、今日もよく遊んだー。
  ――そうだな…相棒とゲームしてると時間が経つのが早いぜ…
ボクもそう思うよー。なんだかあっという間だよねー。
  ――それだけ楽しいって事だな。やっぱ相棒は最高のパートナーだぜ!
へへ、照れるぜー
  ――さっ、寝るか?
うん!今日も一緒だぜ!
  ――解った解った。ほら、さっさと寝るぞ。
うん!



おはよー
  ――ああ、おはよう、相棒。
今日は何しよっかー
  ――そうだな…だが相棒、その前に一度起きてきたらどうだ?全然起きてないだろ。
あー…そういえばそうだったね……
  ――時間もオレも逃げないから安心しろ。食事とか色々あるだろ。
…うん、解った。じゃあ、ちょっとしたい事もあるから、悪いけどちょっと自分の部屋で待っててくれる?
  ――…?解った。じゃあな。
うん。帰ってきたら、迎えに行くからねー
  ――おう、待ってるぜ。



もう一人のボクを見送って、扉を閉める。
彼の気配が完全に遠ざかったのを感じてから。
ボクは、ごめんね、と、小さく呟いた。

壁に背を預けたまま、ズルズルと崩れ落ちる。
謝罪の言葉だけを、頭の中で繰り返し呟きながら。
ボクは…彼に、初めての隠し事をしてい、る。

そのまま、暫く立ち上がる気も起きず、そのまま座り込んでい、た。



もう一人のボクー!
  ――おう、戻ってきたか。
うん、ただいまー。さっ、遊ぼうぜー!
  ――やる事はもう全部済んだのか?
大丈夫だぜー
  ――そうか。よし、やるか!
うん!今日こそ勝つぜ!



くうー…
  ――今までで一番、危なかったぜ…
それでもキッチリ勝つんだもんなあ…
  ――フフ、運に愛されたな。
はー、少し休むか―。
  ――そうだな、ちょっと熱くなりすぎたもんな。
あ!そうだ、久々に一緒にカードを組もうか!
  ――よし、やるか!



この罠カード、入れるべきかなあ…
  ――確かに強力だけど、使う機会が少ないし、他に抜けるカードもないぜ…
うーん…確かに機会は少ないけど…無いと辛い事もあるぜー
  ――じゃあこの魔法カードを代わりに抜くか?
そのカードには随分助けられたからなー抜きたくないぜー…
  ――じゃあやっぱり、代わりのカードは無いぜ。
モンスターを抜くのはどうかな?
  ――バランスが変わっちまうからな…悩みどころだぜ…



…?どうしたの…?
  ――いや…随分色んな奴らと、デュエルしたなと思ってな…
そうだね…
  あいつらどうしてるかなー、あいつとかあいつとか、また闘ってみたいな。
……そうだねー、どうしてるんだろねー。きっと、ますます強くなってるんじゃないかな。あはは。
  ――ああ、きっとそうだな。次に会うのが楽しみだぜ。
……そうだね。向こうもきっと、そう思ってるかもねー……
  ――…?相棒?
…よしっ、もう一人のボク!ボクとデュエルだ!
  ――…!フフ、よし!来い!



はー、完敗だー。
  ――いやいや、よく戦ってたぜ、相棒。途中何度も冷や冷やさせられたさ。
いやーでも、うー。
  ――フフ。まだまだ負けられないさ。オレのプライドに掛けてな。
ボクにもプライドがあるんだけどね…
  ――まあ、お互いあるから、それは仕方ないな。
はー。さて、そろそろ寝るか―。
  ――そうするか。
ね、もう一人のボク。
  ――はいはい、一緒に、だろ?ちゃんとここにいるさ。
へへへ。じゃ、おやすみ。
  ――ああ、おやすみ。



――眠りについた相棒の顔を。そっと、眺める。
相棒は、なんだか最近、前より甘えん坊になった気がする。
不安のせいか、それとも…

そっと、息をつく。
オレが不安にさせたのなら、それは、オレが悪いという事。
だから、相棒は。
オレが、守る。
何があっても。

それは。決して義務感だけではない、何か。



おはよう、もう一人のボク。
  ――おはよう。今日も良く寝てたな。
えへへ、君と一緒だからかなー
  ――フフ。…今日もここにいるのか?
うん!今日も一緒だぜー
  ――そうか。今日は何をしようか?
そうだねー、勝負ばかりじゃ疲れちゃうし、たまにはブロックでもしようか。
  ――ああ、解った。



あー、今日も楽しかったねー。
  ――ああ、そうだな。
こっちの部屋にはもう慣れた?
  ――ああ、すっかりな。
良かったー。これからもずーっとここで一緒に寝ようね。
  ――フフ。解ったよ。
へへ…



相棒の寝静まった部屋で。そっと、起き上がる。
玩具の散らばった部屋。相棒の心そのものの部屋。
きっと相棒は、まだまだ子供なのだろう。
だからこそ純真で、無垢で、素直で…
信じる強さも、弱さも、誰よりも持っていて…

だけど。そこに違和感が、混じった。
一点の曇りも無かった、真っ白なキャンバスに。
今は確かに、何かが混じっている。
それは何か。
そして…
聞くべきか、否か。

…ああ。
きっとオレは、恐れてるんだ。
この世界が、壊れる事を。
けれど。
それ以上に、相棒の事が、心配だから…

相棒。
お前は一体、何を考えている…?
何を…隠してるん、だ…



おはよー、もう一人のボク。
  ――ああ、おはよう。
相変わらず早起きだねー。
  ――相棒が遅起きなんだろ。
そうかなー。さーて、今日は…
  ――ご飯が先だ。
むー、解ったよ。じゃあ、食べたらまた、君の部屋に迎えに行くねー
  ――そうか、解った。待ってるぜ。
うん、またねー



扉を閉める。
一気に静かになったせいか、部屋もほんのり薄ら寒くなったような気もする。
見るともなく、部屋を見渡す。
ああ。
彼がいないと、こんなにも色褪せて見えるのか。
どんなに面白い玩具も、ゲームも。
何もかも…
…でも。もう一人のボクは…どうなんだろう…?



うーん、どっちが良いかなー
  ――両方すれば良いだろ?
どっちを先にやるか悩んでるの!
  ――どっちでも良いだろう…
いや!ボクにとっては大事な事なの!
  ――まったく…



もう一人のボク―今日はこれをしようよー
  ――おーけー、相棒。
今日も楽しみだぜー
  ――…フフ、そうだな…
いっくよー



よーし、今日はあれをやるぜー
  ――…ああ。
これはねー、こうやってってー
  ――…ああ。
よーし、じゃあやるよー
  ――…ああ…やろうか。



――…終わりの足音が、聞こえる。
一歩一歩、確実に。
破滅か、終焉か。それとも…
変わりたくない、変えたくない、という思いと裏腹に。
このままではいけない、と、警鐘が鳴り響く、から……



…?もう一人のボク?どうしたの?
  ――……
…ねえ…ホントにどうしたのさ。
  ――…相棒。休みとやらに入って、何日経った?
え…?
  ――生憎オレには、時間の感覚はあまり無いが…相棒と何回寝たかくらいは、解ってるさ。
……
  ――そんなに長い休みなのか?
……うん。
  ――何の休みだ?
……それは…



暫く躊躇ってから。
彼の、目を。伺う。
…怒っては、いなかった。
その目にあったのは、ただひたすら…ボクを心配してくれている、色。
覚悟していたはずなのに。胸が、痛む。
きっと…彼はもう、解ってる。



ごめんね、もう一人のボク…
  ――学校は、行かなくて良いのか?家の人や、皆は心配してないのか?
…学校はね。大丈夫なんだよ。
  ――…家の人や、皆は…?何日も部屋に閉じこもってて、心配してるんじゃないのか?
それも…まあ、大丈夫だよ。
  ――…どうしてだ?
……
  ――……
……ゴメンね。
  ――怒ってるんじゃないんだ。ただ、相棒が心配なんだ。
…ありがとう。でも、「ボク」は…大丈夫なんだよ。今ここにこうしてるのが、証拠さ。
  ――どういう事だ…?
君には、本当に悪いと思ってるんだ…。だけどボクは…ボクには、これしか、選べなかった。
  ――……
…千年パズル。
  ――……
…千年パズルを身に着けていないと、君は表に出れない。
  ――……ああ。
だけど、交代した状態で外したら、君は表のままだ。
  ――……ああ、そうだな…
じゃあ、逆は…? …そしてボクは…賭けに勝った。
  ――まさか……
ボクが寝たらパズルが身体から離れるように、仕掛けを作ったんだ。そしてパズルは…二度と戻らない。
  ――なんて危険な賭けを!
だけど君もボクも、こうしてここにいる。きっと今頃ボクの身体は病院にでもいると思うよ。
  ――…くっ……
ボクは…ただ、君とずっと一緒にいたかったんだ。こうすれば二人とも…もう、何処にも行けない。
  ――そんな事をしなくても…オレは…ここにいたのに……
でも、未来は解らない…デュエリストの本能が…宿命が…いつかきっと、君を何処かに誘う…
  ――……
何よりも…表にいない時、君は一人ぼっちだ。
  ――…!
だから…だから!ボクがずっとここにいる!淋しくないように…退屈しないように…幾らでも、付き合うから…
  ――…っ!……
…君を閉じ込めて…本当に、ごめん。けどボクが…みんなの分も、君を楽しませるから……
  ――相棒……



その先に。オレは、何を言おうとしたのだろう?
言葉に詰まったまま、言うべき言葉は、永遠に、闇に見失ってしまった。
この感情の正体は、何だろう。
後悔だろうか。やるせなさだろうか。
不思議と怒りは感じていない。
…いや。不思議ではないか。怒りなんて、感じるはずもないのだ。
だって、オレのせいでもあるだけじゃなく、相棒の気持ちが、痛い程に伝わってくるから…
一緒にいて欲しい、と、一緒にいてあげる、と。
どちらが上回ったのだろう?
どちらでも、それは、考えても詮のない事だけど。
少なくても、相棒は。自分のためだけじゃなく、オレのためにも、自分を犠牲にしたのだ。

つと、と、涙が零れた。
相棒が、とても憐れで……

どうすれば、相棒を救ってやれたんだろう?
IFを綴っても、仕方ないけれど。
相棒には、未来があったはずだ。信頼できる、仲の良い友達もいて。
相棒の好きなゲームはこれからもどんどん新しいゲームが出るのだろうし、相棒もゲームを作りたがっている。
そう、未来も、夢もあったはずだ。
なのに全てを捨てて、この部屋で朽ちようとしている…オレと一緒に。

それは。
どれだけ憐れで、愚かな事なのだ、ろう?
それでも…責める気にはなれないのだ。決して。



……
  ――…相棒……
……
  ――オレは…ずっと相棒と一緒にいたいって言っただろう…?
…!?
  ――オレの気持ちは変わってないぜ、相棒。
…うっ…うっ…ごめんね…ごめんね…
  ――泣くなよ。相棒は悪くない。悪くなんか、ないんだ。
…ひっ、くっ…うわあああーん……
  ――大丈夫…大丈夫だ。オレたちは変わらない…何も。今までどおり、さ…



泣きじゃくる相棒を、優しく撫でる。
ずっと一緒にいたいのは、本心だった。
望んだ形とも、予想していた形とも、違ったけど…

ああ…だけど。
諦めと、安堵が、微妙に混じった何かの感覚が、こみあげてくる。

これで相棒を、永遠に守ってやれるのだろうか?
全ての、相棒を傷付けるモノから。
そして、オレが闘う事に対して相棒が感じる、不安からも。
オレを狙う奴らに、皆が狙われる事もない。
闘う事だけが、守る事じゃないのかもしれない。
時には、戦わない事も…
それは、逃げなのかも、しれないが。
それでも。
相棒を、みんなを、守れるなら…それでも、構わない。

ずっと一緒にいよう。相棒。
オレが相棒の心を、守ってみせるから…
相棒が壊れてしまうまで、朽ちてしまうまで、ずっと一緒に…

闇の中で。
相棒は太陽だった。
そしてオレは影。
だけどもう、どっちが表で、どっちが影か、解らない。

寄り添いあう、月と星のように。
互いを照らしあえれば、それで……



それは、一つのIFの、物語。
どこか遠くで、銀髪の男の嗤い声が、聞こえた。