その夜の一端(ひとはし)に

 ボクは、彼が強い事を知っている。
 彼も、自分が強い事を知っている。

 どんな時も、勝利を信じて疑わない強さ。
 どんな時も、立ち止まらず進む強さ。
 どんな時も、迷わず選び取る強さ。

 相手がどんな手を使おうと、自分は決して染まらない気高さ。
 何よりも、自分自身を貫く、誇り高さ…

 それは、ボクにはないものだ。
 だから、みんながキミに惹かれ、引き寄せられるのも道理で。
 ボクなんか…と、思ってしまうんだ。

 そんな事を思うたびに、彼は。
 見透かしたように、ふわりと笑うんだ。

「馬鹿だなあ、相棒は」
 髪を、クシャッとされる。
「オレは、相棒こそが本当に強いっていつも言ってるだろ?」
 …でも……
 うつむくと、彼は苦笑した。
「まあ、そんな相棒も…好きだよ」
 そっと、額に降ってくる口付け。
 じんわりと、暖かさが全身に広がるような感覚。
 ああ、やっぱり彼は…彼こそが、優しい。
 ぎゅ、と、もう一人のボクに抱き付く。
 もう一人のボクは優しくボクを抱き返すと、そのままベッドに倒れこんだ。
 抱きしめられたまま背中を優しく撫でられるのが、気持ち良くて。
 そっと目を閉じる。
 目を閉じてても、彼が優しく微笑んでいるのは、伝わった。

「好きだぜ、相棒」
 言い聞かせるように囁くもう一人のボクの言葉に、改めて照れると、彼は。
 悪戯っぽく、笑った。
「相棒は…?」
 つ、と、彼の指が、ボクの唇に、触れる。
 ドキッ、と、する。
 あっ…これは…いけない。
 思わず身体が後ずさるが、その間もなく、彼に捕まえられる。
 その瞳には、どこまでも楽しそうな光。
 これは…ホントに、マズイ。
「ほら…遊戯」
 ドクン。
 心臓が大きく脈打つ。その、たった一言で。
「ず、ず、ず、ズルイよ!急に名前を呼ぶなんて!」
 抗議しても、彼が堪える筈もなく。
「さて…?」
 彼はおかしそうに、笑うだけ。
「話を逸らそうとしても無駄だぜ…相棒。ほら、言ってみろ」
 彼がゆっくりと、迫ってくる。
 さっきまでと逆の体勢になって、ベッドに押し倒された形になる。
 ああ…
 意地悪だ、と、思うのに、こういう時に一際かっこいいなんて、ホントにズルイ、と思う。
「さあ…」
「~~~///」
 躊躇いと、諦めと。でも。
 悔しいけど、期待してるのが解るから…
「す…好き、だ、よ…」
 絞り出すように言うと、彼は。
 とても満足そうに、くつくつと、笑った。
「いい子だ…」
 抗議しようとした言葉は、唇によって、塞がれた。

 …ああ。
 悔しいけど、やっぱり、彼は世界一かっこ良くて…
 眩しすぎて、目を閉じた。