無口な風の中に

一陣の風の中に。
ふ、と、懐かしさを覚える。
リンクして呼び起こされる、記憶。
何かを思い出しそうな、気がするのだ。

穏やかな風が、吹いていた。
優しい日差しが、注いでいた。
その中で…

吹き抜けた風の向こうに。
誰かから呼ばれた錯覚がして、振り向く。
が、当然誰もいる筈がなく…

ふう、と、息をつく。
届きそうで、届かない、ナニカ。
その正体を、知るべくもなく。

…ただ。
温かな、何かを…
大きな…が…頭を……

…嗚呼。

ふ、と、胸にこみあげる、記憶。
それは、望郷にも似ていて……

懐かしいとも…淋しいとも言えない感情が、去来する。

…ち……

我知らず呟いた言葉の、その意味も。
続けるべき言葉も。
そっと、風に連れ去られた。

今はまた、遠い遠い、記憶の…向こう。

届きそうで、届かない。
手を伸ばしただけ、逃げていく。
何故、を問う先もないままに。

ただ…
風の去った先を、見つめる。