珍しい午後の茶話に

「あれ?海馬…君?」
 掛けられた声に。チラリ、とそちらを向く。
 眼に入ったのは、案の定、見知った顔だった。
「どうしたの?こんな所で」
 公園のベンチに座ってる俺がさぞかし珍しいのだろう。
 不思議そうに問うてくるのに、面倒臭いと思いつつも。
「フン、俺だって偶にはのんびりする事もあるさ」
 態とらしく肩を竦めて見せると、納得のいったような、いってないような、
なんとも微妙な表情で応えた。
「ふぅ、ん…まあ、いつも忙しそうだし…たまには必要だよね、うん」
 半ば一人ごちるような、科白。
 実際、返事というより、自分の中で自己消化しようとしてるだけかもしれない。
「…隣…座っても良いかな?」
「…勝手にしろ」
「じゃあ、勝手にするね」
 チョコン、と、遠慮がちに離れて座る。
 豪胆なのか気弱なのか…まったく。
 …ややあって。空を見上げて、一言。
「……はー、いい天気だねえ…」
 釣られて仰ぎ見ると、変わらず、見事な蒼穹が広がっていた。
「それにしても…やっぱ暑いなあ…すぐに喉が渇いちゃうよ」
「…そうだな…」
「あ!お茶ならあるけど、飲む?丁度二本あるから」
「…予備じゃないのか?」
「もう帰るだけだし、大丈夫だよ」
「…なら、貰ってやろう」
 答えると、何故か嬉しそうに破顔して。
 バッグを漁り、確かに二本、お茶を取り出す。
 まあ、折角だ。貰うのも悪くなかろう。
 此方が蓋を開けるのを待ってから、向こうも口を付けて一言。
「んー、こう暑いと、温くても美味しいや」
 あはは、と、屈託なく笑う。
 思わず、フ、と、口元を緩め、此方も一口。
 そして、ふと、思い出す。
「そうだ貴様…胡桃は好きか?」
「胡桃…?好きだけど…?」
「そうか。何やらモクバに、身体に良いからと持たせられたが…」
 言いながら鞄を漁ったところで、ふと、悪戯心が芽生え、ニヤリと笑む。
 見えないように手早く蓋を開け、そして。
「そら」
「へ?」
 意味が解らず声を出したその口に、素早く胡桃を放り込む。
「~!?!?!?」
「くはははは、なかなか面白い顔をするな、貴様」
「び、ビックリした…」
「ククッ…折角だから貴様も食え。茶には合うだろう?俺がやるんだ、有難く思うんだな」
 傲慢に、口角を上げると。
 仕方ないなあ、とでもいった、諦めの顔。
 その姿に満足気に笑んで、胡桃をもう一つ。
 …こんな日も、偶には良かろうさ。