闇の檻

君を、オレだけのものにしたい。
君の瞳が、オレだけを写しているように。
君の姿を認めれるのが、オレだけであるように。
その声も、オレ以外の者には与えるまい。

闇に捕らわれて。
貴方という光だけ、見ている。


「…蔵馬?」
 飛影の不思議そうな声が、耳の中で響く。
 木霊するそれが五月蝿くて思考がまとまらず、その言葉の意味を理解するのに大分かかった。
「それで…いつ魔界に行くの?」
「明日にでもたつつもりだ」
 ようやく紡いだ問いに、事も無げに飛影が答える。
 僅かに胸が痛んだ。
「…何のために?」
「…お前には関係ない」
 胸に、痛みが走る。
「何だ?淋しいのか?」
「淋しいと言えば、ここに居てくれるわけ?」
 そんなはずは、ないでしょう?
 声には出さずに問う。
 返って来た答えは予想どおりだった。
「まさか」
 冷たい水の中に堕とされたような感覚に、襲われる。
 頭の中で、何かいろいろな声がザワザワと五月蝿く蠢いている。
「いつ、戻ってくるの?」
「さあな…気が向いたら戻ってくるさ」
 頭の中の声が大きくなり…思考が掻き乱される。
 お前は、いつもそうやって…
「蔵…馬?」
 飛影が、訝しげに問う。
 けれど、答える事はしなかった。
 代わりにその腕を掴み、不信な表情のその顔を引き寄せ、口付けた。
「な…」
「行かせないよ。お前がオレから離れていくだなんて…そんなの、許さない」
その理由が何であっても。

 オレだけを、見ていて。
    オレの声だけを、聞いていて。
       誰にも、何にも…お前のその一部なりとも渡したくはない。

 昏い感情に、捕らわれて。
 押し倒す…その小さな体を。
「くら…」
 抗議の声を上げるその唇を、自らのそれで塞ぎ、そして服を剥ぎ取る。

 オレの、ものだ…

 その感情が。
  全てを呑み込んでいく。
   全てを消し去ってゆく。
 残るはただ飛影を繋ぎとめたいと思うこの心だけ。


「やめ…」
「嫌だ」
 短く言い捨て、行為を続ける。
「小さい体…何処にあんな力があるんだろうね…こんなに頼りないのに」
 本当に、飛影の体はどこまでも華奢で、どこまでも繊細だった。
 愛しい、その思いを伝えようとして、その体に口付ける。
「んっ!」
 途端に洩れる、飛影の小さく高い音。
「どうしたの?」
 くすりと笑い、問う。
 それと同時に、そっと飛影の秘部の周辺を弄(まさぐ)る。
「やめ…や…あ…」
「随分と可愛い事…誰も想像できないだろうね、飛影がこんなに可愛いなんて、さ。幽助も桑原も…雪菜だって、思えないだろうね」
 オレだけの、特権だ。
 言い放ち、クスクスと笑う。
「誰にも、見せてやらないよ…お前のこんな姿を見るのも、お前を悦ばせるのも、オレだけで充分」
 誰にも与えてやるものか。
 飛影の秘部に手を伸ばし、そしてその濡れそぼつそれを口に含む。
 ビクリ、と強張る飛影が可愛かった。
「く…あぁっ!」
 短い悲鳴のような声と共に、飛影のそれから液体が迸る。
 それは、ほんの少しだけ…苦かった。
 喉の奥を指す、焼くような痛みを無視して、声を紡ぐ。
「可愛い…」
 くすり、と笑うと、飛影の顔が赤く染まった。
「貴様…こんな事してタダで済むと思うなよ」
「そう?でもさせないけどね」

 くすくすと、笑う。
 誰も知らないお前を見ている。
 誰も知らないお前を知っている。
 行為に想いごと身を沈めて。
 絶え間無い官能の波に堕ちてゆく。

 始まりの思いは知らない。
 始まりも終りも判らなくていい。
 ただお前だけを思っていたい。
 昨日も明日も今日には繋がらなくていい。
 
 ただ。
 思ってる。
 お前だけを。

 光は必要無い。
 終り無き闇の中に。
 貴方と二人、捕らわれていたい。