dark ruler
-typeA-

夜が来ると。
彼は、そこへ行く。
日の光の差さぬ、ただ深遠なる闇の横たわっている、その部屋に。
毎晩欠かす事無く彼がそこへ向うのは、別段面白い事があっての事ではない。
そこに在るのは闇と静寂と、そして――

彼が、キィっと僅かに音を立てて。扉を開ける。
その視線の先に在るは、一人の青年。
青年が、彼の姿を認めて、艶然と微笑む。
「来たか」
その言葉に彼は答えず、ただ視線を向けるのみ。
「遅かったな…待ちくたびれたぞ」
愉しげな光を瞳に宿して、青年が言う。
「詫びに、たっぷりと愉しませてくれる事だろうな?」
嬲るような口調。けれど彼はやはり無言だった。
「来い」
命じる事に慣れた、その傲慢な響きの宿る声で。青年が、告げる。
彼は、やはり何も答えず、それでも言葉に従った。
青年はそれに気分を害した素振りもなく、ただ愉しげな光を瞳に載せるばかり。
「脱げ」
彼が、それに従う。
その細くしなやかな肢体が露になり、闇の中に浮かびあがる。

彼は。
青年とは、何処までも対照的だった。
陽光を紡いだようでいながら闇の中に在っても輝きを失わない、緋色の髪と。
月光を紡いだようでいながら闇の中に在ってもなお輝く、銀の髪と。
精悍な体つきの青年と。
華奢にも見える彼と。
まるで最初からそうあるべく定められていたかのように。

青年が、そっと彼に手を伸ばし、彼を強引に引き寄せた。
それは。
始まりの合図。
いつもの営みの行われる……


青年と彼との時間が始まったのは何時(いつ)であったか。
二人は、とうに記憶に留めてはいないだろう。
それほどの長い時の間、その営みは続けられてきたのであった。

静寂の檻を壊して。
二人の動く音が僅かに闇に木霊する。
毎夜繰り返される、それ。
この空間で時はその意味を失う。
同じ時が流れる事は決してないのだけれど。
同じそれしか与えられないこの空間では、疑わしくなる。
二人の心臓も決して規則正しく鳴りはしないから時を数える事はできない。
外界から完全に閉ざされているために昼夜の区別すら無くて。
永遠に続くのでは、そう思える程の長い夜を、彼は毎夜過ごすのだった。


行為から解放されて。
彼が、立ちあがる。
光の中――彼が本来あるべき世界へ戻るために。

その背に、何を思ったか。
青年が立ちあがり、彼の体を抱きすくめる。

−−−

闇は青年の声を飲み込んで。
彼の心には何も届かず……ただ、抱かれるままに、立ち尽くしている。

その脚に、白い液体がつと、とたれた。