ペットショップの風景

いい天気だなあ。
思って蔵馬は伸びをした。
月曜日の昼下がりという事もあり、店内に客の姿は見えない。
あと数時間もすれば、学校帰りの学生達で賑わうのであるが。
それにしても、いい天気だ。
ふむ、と頷く。
「飛影!」
諸事情により、この店唯一の店員である飛影を呼ぶ。
飛影はすぐに、怪訝そうな顔で現れた。
「何だ」
「この子達のケースを洗おうと思って。手伝ってくれるよね?」
にっこりと笑んで言う蔵馬。もちろん、断れるはずがない。
「この子を外の柵の中に連れてってくれる?」
はい、と子猫を手渡されて、正直飛影は困惑した。
どうも、子猫や子犬といった動物は苦手なのだ。
どうしていいか判らないので、とりあえず服にしがみつかせて、持ってみる。
と、子猫は窮屈だったらしく、服をよじ登って肩にちょこんと落ち付いてしまった。
落ち付いてくれたのはいいのだが…どうも子猫が落ちそうだし、視界の端にいられるというのも、落ち付かない。
降ろして抱こうとするのだが、子猫はしっかりと服に爪をたててしがみついてしまっている。
背が低いとは言え地上1メートル半はあるのだ、子猫にとっては充分な高さである。
しゃがんで子猫に降りてもらおうと思ったら、今度は背中の方に行ってしまった。
ますます困惑する飛影。
それを見て、呆れたように蔵馬は言った。
「何やってんですか」
ほら、と蔵馬が言って、ヒョイっと子猫を抱き上げる。
「飛影に抱きついていいのは俺だけなんですよ」
「な、な、な……」
子猫の鼻先に指を当てて諭す蔵馬に、飛影が赤面する。
「俺にツメを立ててもいいのは、飛影だけなんだけどね♪」
「バカッ!」
そっぽを向く飛影に、蔵馬がにっこりと笑む。
けれど飛影はどうもこれ系の言葉にはなかなか慣れてくれないらしく、無視された。
「あらら、怒っちゃった?仕方ないなあ、じゃあこの猫はオレが抱いてるかな」
言って、作業に戻る蔵馬。
飛影はしばらくそれを黙って見ていたが、時折蔵馬が子猫を撫でるのを見て、心穏やかではいられなくなったらしい。
無言で蔵馬に近付き、子猫を取り上げる。
何を、と驚く蔵馬の髪を引っ張り、僅かに背伸びして飛影は自分から蔵馬と唇を重ね合わせた。
「お前に触れていいのも、俺だけだ」
朱を這わせて言う飛影に、蔵馬は微笑んでもう1度キスした。
「ありがとう、飛影」
好きだよ、と囁く蔵馬の腕の中で、子猫が居心地が悪そうにフミャアと鳴いた。