即興詩 †夜の散歩†

夜の散歩には
コートは必要ない
手袋もマフラーもいらない
ただ ワンピースだけでいい

夜の散歩には
暖かさは必要ない
冷たいそれで充分

風邪を引きたいわけではない
ただ いらなく思えるだけ
雪が降ってきたとしても構わない
雨が降ってきたって関係ない
何もこの身体の熱を奪えはしないのだから


夜の散歩には
街灯は必要ない
窓から洩れて来る光もいらない
月明かりだって必要ない

夜の散歩には
灯りは必要ない
暗いそれで充分

闇は心に恐怖を植え付ける
けれど構わない
犬が来はしないか 転びはしないか
思ってみても足を止めはしない
本当に怖いなら出てはこない


夜の散歩には
時計はいらない
感情もいらない
闇と静寂があればいい

恐ろしく冷えた気持ちで
夜の世界を見つめる
寒さに指先が凍っても
それを温める気にも
帰る気にも なれない

恐ろしく冷えた気持ちで
止まった時を数える
どれほど時を数えても
帰る気にはなれない


冷たい空気が肌を撫でる
けれど寒くはない
冷たい月が静かに家を照らす
けれど振り返りはしない

夜の散歩には何もいらない
ただ
凍えた空気と
凍えた心さえあればいい――